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【スターチ・ウォーズ解説】ヒドロキシエチルデンプン製剤(HES)は本当に使い続けていいのか?

※動画の解説文だけを見たい人のために、台本をアップしています。
ただし、必要に応じて改変していますので、細部は異なるかもしれません。
記載するのは図説などを含まないシンプルな文面だけです。図説などが必要な方は動画を参照してください。

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ペ:こんにちは、ペンギン先生です。
コ:コシロです。
ペ:今回は、前回投稿した「スターチ・ウォーズ」の解説をしていこうと思います。
コ:解説?
ぺ:今回、スターチ・ウォーズを見て、どう思ったかな?
コ:まず、HESってまだ使われているみたいだけど、本当に使い続けてもいいのかなって疑問が真っ先に出てくるよね。
ぺ:そう、スターチウォーズでは、HES有害性ばかり着目されていて、有益性についてはあまり強調されていない。それで誤解を生む危険性があるから、一応解説が必要だと思ったんだ。まだ見ていない人は、先に「スターチ・ウォーズ」を見ることをお勧めします。
コ:宣伝なんだ?
ペ:さて、HES、正式名称ヒドロキシエチルデンプンは1960年代に開発された薬剤だ。HESは、血管内に残りやすい物質だ。なので、点滴に混ぜて血管内に入れると、血管の外の水分を強力に引き込み、血管内の水分量を保つことができる。
コ:細胞の水分がカラカラになったりしないのかな?
ペ:塩分など、溶けている物質ごと水分が移動するので、間質の浸透圧は変わらない。細胞の周囲の浸透圧が変わらないので、細胞の水分にはほとんど影響を与えない。間質の水分が多くなると、浮腫などの原因になるので、言うならば、浮腫の原因になる水分を血管内に引き込んでくれる感じだね。
コ:へー、便利だね。
ペ:そう、非常に便利だ。これによって、より少ない点滴の量で血管内の水分を増やすことができるから(※1)、出血していても循環を急速に回復させることができるし、間質に水分を残さないから浮腫の予防にもなる。その浮腫は、手足のむくみだけではなく、消化管のむくみなどだったりする。そのため、HESの投与で、消化管手術後の機能回復が早くなり、嘔吐が減った、などのデータもある(※2)。
(※1)CRISTAL試験, FLASH試験,
(※2)https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0039606017304336
コ:悪い効果ばかりじゃないんだ?
ペ:スターチ・ウォーズでも出てきたけれど、外科手術の関連だとよいデータも多い。例えば、2018年にAnesthesiologyに投稿された論文によると、HESは一般的な点滴と比べて、手術中は「血行動態の安定」「昇圧薬の使用頻度の減少」「出血量の減少」、手術後は「血行動態の安定」「点滴の量の減少」「乳酸値の低下(臓器の虚血の減少を意味する)」「気分不良の低下」を認めた。つまり、通常より少ない量で、通常より良好な血液の循環の安定が得られた、ということだ。研究には160人登録されていたが、手術後に亡くなったのは3人で、HES群の死亡はゼロだった。それぞれの原因は以下の通りだ(POD1 出血性ショック, POD7 吻合部漏出, POD15 肺塞栓症)。原因を見ると、この3人にHESを使用していたら死亡を防げた可能性も否定できないね。HESを手術中に使用すると、出血を減らし、腸管の浮腫が減少し、術後は血液の凝固を抑制する作用があるからね。もちろん、断言はできないけれど。
コ:この結果を見ると、HESって、めちゃくちゃ優秀じゃない?
ペ:すべての研究が良好な成績を収めているわけではないが、適切に使うことができれば、かなり優秀な薬だと言っていいだろう。伊達に半世紀以上も使われていない。
コ:でも、「スターチ・ウォーズ」では、「米国市場からの全撤廃」を訴えられていたりと、かなり危険な薬のイメージがあったよね?これがさっき言っていた誤解かな?
ペ:あくまで私の個人的な意見だが、6S試験CHEST試験も、研究デザインとして、HESのメリットをうまくコントロールできていないんじゃないかと思っている。水や食塩でさえ量を間違えると有害になるものだ。まして、HESは薬物だし、過量になると不具合が出ても全然おかしくはない。体に良い、体に悪いとか、そういう問題ではなく、投与量や投与タイミングなどについて、より有効に使えるように使用法を考えるのが本来あるべき姿のはずだ。
コ:確かにそうだよね。
ペ:そもそも、HESなどの膠質液は、間質から血管に水分を引き込む性質があって、通常の点滴とは性質が違うのだから、単純比較はできないし、研究モデルを組むのは非常に難しい。輸液学自体、近年に急速に発展してきた分野だ。2018年辺りに、ようやく生理食塩水の大量投与が、一般的に使われるリンゲル液より予後が悪いことが証明された。また、敗血症の治療では、最初は大量に点滴をしたほうがいいが、回復期に循環血液量が多すぎると逆に有害になる。それが知られ始めたのは2000年に入ってから、一般的になるのは2013年頃だから、6S試験CHEST試験よりも後だ。これらについては、過去の動画で説明していますので、興味のある人は参照してください。
コ:かなり最近だね。つまり、6S試験CHEST試験は、過剰な点滴や、生理食塩水が有害ということも知らない状態で行われた、ということだね。
ペ:もちろん、あらゆる学問分野は日進月歩だし、当時の知見の範囲で、6S試験CHEST試験などは研究デザインを頑張った、というのはわかる。しかし、仮に現在の知見があれば、最低限、回復期にHESを避けるか減らすか投与基準を作る、などのデザインにすると思う。少なくとも、回復期も含め、長期にわたって重症患者に大量投与した報告を見て、「HESをすべて規制すべき」なんていう極論が出ることは無かったのかな、とも思う。
コ:情報が後出しとはいえ、デザイン自体に問題があったっていうことになるもんね。そう考えると、有害な可能性のある集中治療室への投与を中心に規制して、手術室での使用を許可するっていうスターチ・ウォーズの結果は正しいのかな?
ペ:少なくとも、現状での最適解だと私は思っている。より適切な使用法もあるとは思うけど、それは今後の研究が必要だ。研究が進めば、集中治療室でも使い道はあると思っている。そもそも、HESの有害性を示す論文みたいになっているCHEST試験でさえ、すべてが悪い結果だったわけではない。確かに腎代替療法割合が増えていたり、肝障害割合が増えていたりというデータはあるが、軽度の腎障害はむしろ減っているし、心血管系イベントは大幅に減っている。腎代替療法割合も1%くらいしか変わらないし、死亡率が増えているわけでもない。その程度の違いなら、腎代替療法が必要になった患者の状態を分析して、適応を絞るだけで、デメリットを取り去ることも可能なように思える。
コ:確かに一足飛びな感じはするね。
ペ:その上で「循環系のリスクが高い患者には推奨」となっていてもよいだろう。それが市場への全撤廃なんて話になるのは本来おかしい。
コ:なんでそんなことになったのかな?
ペ:個人的には、ヨアヒム・ボルトの論文不正が原因なのかな、と思っている。あらゆる分野を超えて撤回論文数のチャンピオンだから、それに対して過剰反応する人が出るのは全然不思議ではない。その状態で、元々「無害な良い薬」とされてきたのが「実は害がある」と切り替わっているので、極論が出るのは仕方ないと思う。
コ:感情論が入っているということ?
ペ:そもそも専門家だって、すべての情報を持っていて答えを弾き出しているわけではない。中には検証できていない情報や、未知の情報、思いも至らない情報が無数にあるのに、既存の情報から結論を選んでいるに過ぎないからね。全てを理屈で説明するのが不可能な以上、感情論が入るのはむしろ当たり前なんじゃないかと思う。これはどの学問分野でもいえることだろうけどね。
コ:専門家と言っても神様じゃないもんね。
ペ:実際、スターチ・ウォーズでも、生食の有害性過量輸液の有害性など、議論の後で新たに出た情報も多いよね。結局、その時々の情報と個人の経験から、できるだけ議論を進めていくしかないので、当然個人の経験が議論に入る余地があるわけだ。私もHESについてはそれなりに自分の意見があって、できるだけ客観的な意見を心掛けてはいるけれど、やはり結論がそれに引っ張られる傾向があるのは否定しない。
コ:ここまでの流れでも結構主張が漏れ出てるよね。
ペ:ただし、それも無数の知らない事実に支えられている結論だからね。新しい事実があれば引っ繰り返るかもしれない。むしろ、科学者としては新しい事実を知っても自分の意見を変えないことこそが、最も恥じるべきことなんじゃないかと思っている。だから絶対自分が正しいとは言わず、謙虚に客観的な事実を受け入れられるようにしたいと思っている。
コ:哲学だねえ。
ペ:そして、スターチ・ウォーズも、それぞれが患者さんのためを思って、自分の持つ情報で精いっぱい議論し、行動していると思うと、この戦い自体が美しく見えてくるかもしれないね。
コ:確かに、みんな自分のために戦っているわけじゃないもんね。そういえば、スターチ・ウォーズで気になってたんだけど……
ペ:何かな?
コ:なんで2010年代のヨーロッパが舞台なのに、忍者がいるの?
ペ:医薬品安全性リスク評価委員会(PRAC)って、医薬品についての情報を調査しているからね。調査と言えば忍者だからだよ。
コ:ごめん、ちょっと意味わからない。
ペ:スターチ・ウォーズって、15分程度の動画なのに登場人物が多いし、組織名も複数出てくるから、特徴のない人が何人も出てくると、見ていて混乱するよね。「あれ?この人なんの人だっけ?」となると、見ていて頭に入ってこないと思うんだ。そういうのを解消するための工夫の一つだよ。例えば忍者にすると、見ている人は「ああ、この人は調査している人なんだ」ってイメージがしやすくなる。
コ:なるほど、確かに見ていて調査員だってことに疑問は持たなかったね。
ペ:同様に、欧州委員会(EC)の代表は、ハンマーを持って机を叩くことで、「この人に最終決定権があるんだ」と印象付けることができる。
コ:あとは議論の時、賛成派は右に、反対派は左にしている時が多かったね。
ペ:それも立場をわかりやすくする工夫の一つだね。あとは、忍者を出すことで、「この作品は脚色しているんだな」って印象付けようという狙いもあるね。
コ:まあ、あれを見て「ヨーロッパに忍者っていたんだ!」と思う人はあまりいないだろうね。
ペ:もしこの動画を医薬品安全性リスク評価委員会(PRAC)の人が見たら、怒られないかだけが心配だ。
コ:その時は潔く怒られようね。
ペ:さて、今回はスターチ・ウォーズの解説をしてみました。
コ:ほとんどペンギン先生のアフタートークって感じがしなくもないけどね……。
ペ:まあ、それは置いておくとして、次回は本格的にHESの副作用についての解説に入っていきます。
コ:解説もするの?
ペ:このチャンネルは医学についての情報を発信しているチャンネルだからね。当然きちんとした解説も入れる。主にHESの副作用が生じる原因について、現在わかっている内容を説明していく予定だ。
コ:また専門性が高そうだね。
ペ:実際、専門用語を使ってしっかり説明していきますので、もっとHESについて専門的に知りたい、という方はぜひ次の動画もご覧ください。
コ:また次回もよろしくね。
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