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解熱鎮痛薬についてのオンライン抄読会 第2回 NSAIDsの薬物動態

※動画の解説文だけを見たい人のために、台本をアップしています。
ただし、必要に応じて改変していますので、細部は異なるかもしれません。
記載するのは図説などを含まないシンプルな文面だけです。図説などが必要な方は動画を参照してください。

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ペ:こんにちは、ペンギン先生です。
コ:コシロです。
ペ:A Comprehensive Review of Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drug Use in The Elderlyの抄読会、今回は2回目だね。「NSAIDsの薬物動態」というテーマで講義をしていく予定だ。
コ:薬物動態って?
ペ:例えば、口から飲んだ薬物が、どれくらい腸で吸収されて血液に入って、どの臓器で分解されるかなど、投与された薬物の流れを示したものだね。飲んだら効いた、注射したら効いた、とかいうシンプルな話だけではなく、薬物が体内でどう動くかっていうのも、適切に使うには大切なんだ。
コ:体の中への入り方と、体の中から出ていく方法、みたいな感じなのかな?
ペ:それに近いけど、体内に入った薬物が、どこを通ってどうやって出ていくか、と言った方が適切かな。今回はNSAIDs薬物動態の基本を、できるだけ簡単に解説する予定だ。さて、ほとんどのNSAIDsは内服された後、消化管でほとんどが吸収され、生体内で利用される。しかし、ジクロフェナクなどの一部の薬剤は肝臓初回通過代謝されるため、生体内利用率が低下する。
コ:初回通過代謝って?
ペ:腸からの血液は、門脈という血管を通って、一旦肝臓を通るんだ。これによって、例えば有害な物質があればそのまま肝臓で解毒されるし、大量の糖分が含まれていても、肝臓がある程度、糖の量の調整をする、などの役割を果たしているわけだね。
コ:肝臓は働き者だね。
ペ:しかし、腸から入った薬物も、肝臓に毒物扱いされることがある。そのため、肝臓で分解されて体内で効果を及ぼしにくくなることがある。このように、腸から入った薬物が、門脈を通って、最初に肝臓に代謝されることを、初回通過代謝、あるいは初回通過効果という。
コ:なるほど、これはNSAIDsに限らないんだね?
ペ:そうだね。肝臓の影響をどれくらい受けるかは薬物によって違うけれど、この初回通過代謝、あるいは初回通過効果の影響を受ける薬物は少なくない。
コ:ジクロフェナク以外はどうなの?
ペ:日本で使われるNSAIDsでは、ジクロフェナクは特に初回通過効果が強く、半分近く効果が弱まるとされている。フルルビプロフェンインドメタシンなんかも1~2割代謝されるようだ。なので、ジクロフェナクはボルタレンサポという名前で、インドメタシンはインテバン坐剤という名前で坐薬にして、フルルビプロフェンはロピオンという名前で点滴に使うなどして、初回通過効果を回避することも多い。
コ:効果が弱まるから、薬として飲まないっていう選択もあるっていうことだね。
ペ:点滴だと完全に初回通過効果を回避できるし、坐薬にすると初回通過効果が半分程度になる。面白いことに、肛門に近い血流は肝臓へは行かないので、坐薬を深く押し込むと初回通過効果が生じやすいし、浅く押し込むと初回通過効果をかなりの割合で回避できるようになる。
コ:そんな細かいところでも効き方が変わるんだ?
ペ:一方で、一部の薬剤はプロドラッグであり、肝臓で代謝されることで初めて薬効を発揮する。
コ:これはどういうことかな?
ペ:これは初回通過効果を逆手に取った方法だね。例えば、薬物を内服した時、胃や腸は高い濃度の薬物にさらされることになる。なので、もしその薬物が胃や十二指腸に有害な場合、副作用が強くなるんだ。これを局所作用という。NSAIDs消化管の潰瘍なんかが有名で、まさにその胃や十二指腸に有害な薬物だよね。でも、胃や腸の中では無害な物質で、肝臓を通って初めて薬物として作用するようになるんだったらどうだろう?
コ:なるほど、そうなると、胃や腸の中にあっても害がないから、副作用を減らせる、というわけだね。
ペ:そう、そして肝臓を通った後は薬物として働くので、副作用を減らしながら、薬効をしっかりと出すことができるわけだ。こういう風に、途中までは無害なのに、代謝されてから薬効を出す薬をプロドラッグという。ロキソニンで有名なロキソプロフェンなんかが代表だね。
コ:なるほど、まさにプロのドラッグだね。
ペ:ただし、血液を通って消化管に達する部分までは防げないので、完全に副作用をなくせるわけではないことに注意が必要だ。さて、NSAIDsは通常肝臓の代謝で無毒化され、代謝産物が尿中に排泄される。一般的に薬物は分解されても、無害になった違う物質が残るので、それを腎臓で追い出すわけだね。
コ:なるほど、邪魔なものをバラバラに分解してからゴミ捨てしている感じかな。
ペ:ちなみに、「NSAIDs腎障害に関わるので腎代謝」と覚えている人は結構多いけど、実際にはそうではない、ということは強調しておく。
コ:肝臓で代謝するのに腎障害を起こすんだ?
ペ:その原理はまた次回説明することとします。一般的なNSAIDs半減期は薬物によって大きく異なる。例えば、アスピリンの場合は0.25~0.3 時間、ピロキシカムの場合は 45~50 時間といった感じだね。
コ:かなり大きく数字が違うんだね。ところで、半減期っていうのは?
ペ:血液中の薬物の濃度が半分になる時間だね。例えば、赤く染めた水の入った容器があるとして、そこに水を入れながら同じ速度で水を抜くと、段々と色が抜ける速度自体が落ちていくよね。例えば、右側のグラフのように、最初は色が早く抜けるけど、段々と色が抜けるのが遅くなるわけだね。その結果、元々の濃さに関係なく、決まった時間で濃度が半分になるわけだ。
コ:半減期1時間なら、1時間で半分、2時間で4分の1、3時間で8分の1、となっていくわけだね。
ペ:血液でもこれと同じことが起こるわけだ。まあ、医療の世界では色々な条件で誤差が出るから、こんなに単純に予想できることはあまりないけど、半減期が短い薬は効く時間が短くて、長い薬は効く時間が長い、という風に、どれくらいの期間、薬が効くのかの目安に使っている感じかな。
コ:なるほど。
ペ:そして、NSAIDs血漿タンパク質との結合性が高く、加齢やタンパク質の減少で薬物の分布が大きく変わる可能性がある。
コ:これはどういうこと?
ペ:血液にはタンパク質が多く存在しているけれど、高齢者になって、特に栄養の状態が悪くなると、このタンパク質が減ることが多いんだ。ほとんどの薬剤は、多かれ少なかれ、血液中のタンパク質、特にアルブミンと結合する性質がある。すると、当然血液中の薬剤の濃度は下がる。血液中のアルブミンに結合している薬物は、代謝もされないし、薬効も出さない、といういわば休眠した状態になることが多い。つまり、アルブミンに結合する分、血液中の薬物の量が減るので、薬物の効果が弱くなるんだ。一方で、血液中の薬物は肝臓腎臓代謝されていくことになるから、濃度が下がる。しかし、血液中の薬剤が減ってきたら、アルブミンに結合している薬物が、逆に血液中に出てきて血中濃度を保とうとするので、薬剤が血液中に長い時間留まるようになるわけだ。もし、血液中のアルブミンが少なくなると、薬効を弱める力が働かないから、効果が強く出ることになるし、代謝の影響を受けて無害化されるのも早くなるから、効果時間も短くなるわけだ。ただし、高齢者の場合、肝臓腎臓の機能が落ちていて、そもそも薬剤を代謝したり排泄したりするのに時間が余計にかかることも多いので逆に効果時間が長くなることも多い。
コ:そうなると、効果が強くなるのに、効果時間も長くなる可能性があるわけだね。
ペ:そういうことになるね。そして、それが副作用を増やす原因にもなりかねないわけだ。

ペ:さて、今回の講義はここで終了とします。
コ:今回は短めだったね。
ペ:あまりマニアックな話になるのもよくないし「ここまで知っていたら十分」だと思うからね。
コ:今回くらいが、程よいっていうことかな。
ペ:そう思っていいと思う。次回からは副作用について講義しますが、これは話が深くて長くなるので、次回は腎臓心臓のみにテーマを絞って説明する予定です。
コ:また次回もよろしくね。
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