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血液凝固 / 凝固系 / 血液検査 / PT / APTT / 外因系 / 内因系 / 共通系 / トロンビン / フィブリノゲン / フィブリン / 血友病 / DIC / ヘパリン / ワーファリン / INR / 肝臓 / ビタミンK ジュニー:血液凝固に興味を持ったコシロは、ペンギン先生の勧めで血液凝固学習ツアーに参加することになった。凝固因子たちによる止血の現場と、そのブレーキとなる者たちの活躍を見て、それぞれから話を聞いた。そして、できた血栓を溶かす、線溶の現場の見学もした。血栓ができてから溶けるまでの、基本的な流れは大体わかったみたいだね。次は、基本検査であるPTとAPTTについて勉強する予定だ。 コ:詳しい凝固系の仕組みは第1回の動画を見てね。 あ:では、休憩は終わりにして、第3回に入ります。今回は凝固系の血液検査についてです。 コ:血液検査って何をするの? あ:読んで字のごとく、血液を調べることで凝固系の機能を調べます。今回は、最も一般的な、PTとAPTTを見ていきましょう。 コ:まずはメジャーなところを確認しようっていうわけだね。 あ:その通りです。さて、PTやAPTTは、凝固系の、最も一般的な検査です。これらの検査では、採血した血液をクエン酸の入った試験管に放り込み、遠心分離して血漿だけを取り出します。 コ:赤血球や血小板は除かれているということだね。 あ:クエン酸は第4因子のカルシウムと強く結合するため、Gla残基が使えなくなって、凝固系は事実上封印されます。 コ:プロトロンビン、ナナさん、クリスマスナイン、クロスさんが活動できなくなるってことだね。 あ:こうやって凝固系の活動を止めておくことで、採血した後の、凝固因子の消耗が防げます。検査をしたいときには、カルシウムを投与すれば、凝固因子の活動が再開して、その反応を見ることができます。さて、では、まず検査の現場を見てみましょう。 --------------------------------- あ:それではPTのテストを開始します。皆さん準備はよろしいですか? ナナ:いつでもどうぞ。 あ:では、カルシウム、組織因子、足場となるリン脂質を投入します!(大量投与) ナナ:はい、組織因子発見!合図を送るよ。 クロス:ナナさんからの合図がありましたね。第5因子を活性化、プロトロンビンをトロンビンに。 トロンビン:プロトロンビンからトロンビンへ。よし、ターゲットはすぐ近くだな。フィブリノゲンを固めます。 (フィブリノゲンが硬化していく) あ:はい、タイマーストップです。 --------------------------------- コ:ナナさんが第3因子を見つけてから、フィブリノゲンがある程度固まり始める時間なんだ。 ナナ:そうだね。この時間をプロトロンビン時間、通称PTっていうんだ。大体10秒かそこら(10~13秒)が目標かな。 ジュニー:では、次にAPTTだ。PTと同じように、遠心分離をして血漿のみを用いている。 --------------------------------- あ:それではAPTTのテストを開始します。皆さん準備はよろしいですか? ジュニー:もちろん、いつでも大丈夫だ。 あ:では、カルシウム、カオリン、足場となるリン脂質を投入します!(少な目に投与) ジュニー:カオリンを発見!PTAイレブン、人工物だぞ! PTAイレブン:了解、クリスマスナイン、第8因子を使うんだ! クリスマスナイン:了解、第8因子を投げる。 クリス:クリスマスナインからの連絡を確認、第5因子を活性化、プロトロンビンをトロンビンに。 トロンビン:プロトロンビンからトロンビンへ。よし、ターゲットはすぐ近くだな。フィブリノゲンを固めます。 (フィブリノゲンが硬化していく) あ:はい、タイマーストップです。 --------------------------------- コ:PTでは組織因子を使っていたけど、今回使っていたカオリンって何? ジュニー:カオリンは粘土鉱物の一種だ。接触因子となって、私が反応できるようになる。私が反応してからある程度フィブリンができるまでの時間を活性化部分トロンボプラスチン時間、通称APTTっていうんだ。大体30秒前後くらいが目標だな。 コ:なるほど、PTはナナさんが反応してからフィブリノゲンができるまで、APTTはジュニーさんが反応してからフィブリノゲンができるまでの時間を測定しているんだね。 ナナ:そういうことだね。なので、PTが異常でAPTTが正常なら、私に問題があるということになるし…… ジュニー:もしPTが正常でAPTTが異常なら、このメンバーの誰かに異常がある、というわけだね。 クロス:そして、両方に異常があれば、このメンバーの誰かに異常があることになります。 コ:なるほど、どっちもクロスさんとプロトロンビンはかかわるんだ? クロス:その通りです。なので、共通系と呼ばれます。 ナナ:それ以外で私から始まる凝固因子は外因系。 ジュニー:私から始まる場合は内因系と言われている。 コ:何が「外」で、何が「内」なの? ナナ:私が反応するきっかけになる組織因子は血管の外にあるよね?だから、「血管の外の要因で始まる」ことから「外因系」と言われるようになったんだ。 ジュニー:一方で、私は血管内のコラーゲンに反応すると思われていたので、「内因系」と言われるようになった。 クロス:以前は、外因系によって血管の外から、内因系によって血管の内から、この2つの経路が協力して止血をすると思われていたのです。 コ:今は違うの? ジュニー:実際には内因系は、トロンビンによって活性化されたPTAイレブン以降の活躍が大事、というのが共通認識だろう。 コ:そういえば、ジュニーさんがいなくても、血液凝固にはほとんど影響がないんだったね。つまり、内因系が血管の内側から止血をしているっていうのは間違いってことになるね。 ジュニー:とはいえ、呼び方を変えるのも混乱の元だからね。結局、外因系、内因系という呼び方がされているのさ。 コ:なるほど。まあ、それは置いておいて、PTとAPTTの2つの検査で、大まかにどこに異常があるかがわかるんだね。ここから、問題のある凝固因子を絞り込んでいくの? クロス:これらの検査は、主に「出血しやすい場合の検査のため」「凝固因子の異常の有無を確認するため」「薬の効果を判定するため」「肝臓の状態を確認するため」に行われます。1番の「出血しやすい場合の検査のため」には「犯人探し」をすることがありますし、2番でたまたま異常が見つかった場合には、状況によっては、犯人探しをする場合もありますが、それ以外の場合は、誰が犯人かは重要にならないことが多いです。 コ:異常があるのがわかっていても、犯人は重要ではないっていうこと? クロス:順番に見ていきましょう。まず、1番の、「出血しやすい場合の検査のため」。この時は犯人が非常に重要なので、血小板やPT、APTTなどを確認し、犯人を捜します。基本的には、検査結果の異常を見て、犯人を特定していく感じになりますね。例えばAPTTだけに異常があれば、この誰かが犯人の可能性が高いので、各凝固因子を個別に調べます。特に血友病なんかが有名ですね。 コ:血友病? クリスマスナイン:我々が第8因子を投げるのに問題があるのを、血友病という。第8因子に問題があるのが血友病A、我々に問題があるのが血友病Bだな。 コ:なるほど、どちらにしてもクリスマスナインが第8因子を投げられないことが問題だから、同じ病気みたいになっているのかな? クリスマスナイン:そういうことだ。症状も似ているから、検査しないと区別は難しいね。 PTAイレブン:一方、我々が機能していない場合を血友病Cという。血友病Aも血友病Bも症状が似ているが、血友病Cとでは大きく違いがある。 コ:なんで? クロス:クリスマスナインとナナさんの両方が無事なら、私は両方からの指令を受けることができるからですね。 PTAイレブン:一方、我々が不足している場合、トロンビンバーストが弱くなるから、大量出血の時に問題になりやすいが、逆にトロンビンバーストが不要な程度の小さい出血なら問題にならないからね。 クリスマスナイン:我々が不足していると、クロスさんが働きにくくなるうえに、トロンビンバーストも弱くなるということになるからね。 コ:どちらが機能しないのも困るけど、やっぱりクリスマスナインが機能しない方が怖いってことだね。ところで、血友病って、なんでこんな名前なの? クリスマスナイン:血友病はもともとHemophilia、すなわち、血を好む病気として名付けられたんだ。 コ:出血をよくするから「血が好きだね」ってニュアンスから「血は友達」になったってことなんだ?なんか不謹慎な感じだなあ。 クリスマスナイン:別名として、「王家の病気」っていう呼び名もあるね。 コ:それは何で? クリスマスナイン:イギリスのビクトリア女王の子孫に多く発症していたことが原因みたいだね。 コ:呼び名は格好いいんだけどね。 クロス:血友病以外でも、それぞれの凝固因子は、いずれも欠乏している可能性はありますので、疑われる場合は精密検査をされることになります。 コ:血小板、PT、APTTの3つの検査で問題がなかった場合は、問題ないと言っていいのかな? クロス:その時は検査に出ないところを考えます。血小板の数はあっても機能に問題がある可能性の他、フィブリノゲンの後の第13因子に異常がある可能性などがあります。 コ:そっか、検査ではフィブリンがフィブリノゲンになったら終わりだから、第13因子の異常は反映されないんだ? ジュニー:あとはPAI-1やα2PIが弱いせいで、プラスミンが抑えられず、血栓が解けすぎている可能性もあるね。 クロス:出血がある場合には、このように様々な可能性を探っていきますが、今回の講義ではこれ以上深掘りしません。 コ:検査から偶然見つかる可能性はあるのかな。 クロス:その通りです。2番目の「凝固因子の異常の有無を確認するため」の検査で異常が見つかることもあります。 コ:実際に症状が無いなら、なんで異常の有無を調べる検査をする必要があるの? クロス:例えば、手術をする前に出血のリスクがないかを確認するためとか、重症患者でDICなどの兆候がないかを確認するためなど、ですね。 コ:なるほど、確かに異常があったら怖いところだね。 クロス:3番目の「薬の効果を判定するため」というのは、主にヘパリンやワーファリンがどれだけ効いているかを確認するために使われますね。 コ:ヘパリンとワーファリン? クロス:ヘパリンは第6回、ワーファリンは第5回で詳しく解説する予定なので、今回は深く触れませんが、少しだけ解説します。ヘパリンはアンチトロンビンを強化して凝固系を抑え込む薬です。ナナさんは影響を受けない一方で、内因系は影響を受ける人が多いので、APTTが延長しやすいですね。一方でワーファリンは、ビタミンKを抑えることでGla残基を使えなくする薬ですね。こちらは逆にPTの方が伸びやすいです。ただし、いずれも、強く効くとPTとAPTTの両方に影響します。 コ:クリスマスナインもGla残基を持つよね?なんでワーファリンでPTが優先して伸びるの? ナナ:これは、4番の「肝臓の状態を確認するため」にも関係する話だね。実は私は凝固系を作る機能の異常に敏感なんだよ。多くの凝固因子は肝臓で、ビタミンKによってGla残基が埋め込まれることで生まれるからね。肝臓に異常があったり、ビタミンKが不足したら異常が出やすいんだ。ワーファリンはビタミンKを抑え込む薬だから、その影響を私が真っ先に受けるわけだね。詳しくは第5回の講義参照だよ。 コ:なるほど、ナナさんは肝臓やビタミンKの異常に敏感なんだね。 ナナ:もちろん、ビタミンの不足や肝不全が重くなると、APTTの方にも影響が出るんだけどね。生まれつき私が少ないのでなければ、APTTよりPTに強く影響が出るのは、凝固因子がうまく作られていないことが原因、と考えていいよ。 ジュニー:逆にAPTTに強く影響が出ているなら、フィブリノゲンが減っていたり消耗されているなど、凝固因子の異常が原因になっていることが多い。 コ:フィブリノゲンが減っているなら、PTとAPTTの両方に影響がないとおかしくない? クロス:これは検査の目的の違いですね。 コ:検査の目的? ナナ:PTは外因系を強く刺激することで、検査が完遂する能力を問うけど、APTTは凝固因子の異常を見つけるために、適度に刺激しているんだ。だから、PTはリン脂質の量が多くて、APTTはリン脂質の量が少ないなど、検査の条件にも違いがあるんだよ。 ジュニー:その関係で、抗リン脂質抗体症候群など、リン酸を攻撃する病気があると、APTTの方が影響を受けやすいんだ。 コ:なるほど。 ナナ:あと、PTの方は条件によって大きく数字が変わりやすいから、国際標準化比、通称INR(international normalized ratio)っていうのを使っていることが多いね。 コ:それは何かな? ナナ:PTは、条件が違うと結果が変わりやすいから、同じ条件で測定した健康な血液と比べて、何倍時間がかかったかを計算するんだ。 コ:問題なければ1.0倍くらいになるはずだね。条件を整えて検査を正確にするんだね。 |