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血液凝固 / 凝固系 / 一次止血 / 二次止血 / トロンビン / DIC / 抗凝固薬 / 血栓 コ:はじめまして、コシロです。今回は出血がどうやって止まるのかを教えてくれると聞いてきました。 あ:はじめまして。今回は血液凝固学習ツアーにお越しいただきありがとうございます。私が案内役です。今回は血液凝固の現場を見てもらおうと思っています。案内は受け取りましたか? コ:受け取ったんだけど、よくわからないんだよね。 あ:それもよく言われます。凝固系を勉強すると、番号の羅列ばかり見せられて、イメージがつかみにくいかと思います。その違いをイメージすることも難しいでしょう。ただ、しっかり理解しないと抗凝固薬やDICへの対応を適切にできなくなるかもしれません。現場を見ていただけたら少し理解が深まるかと思います。では、現場を見る前に、色々と見て回りましょうか? コ:なんか色々とふわふわ浮いているね? あ:血液の中には出血を止めるための材料がたくさん流れています。まず、あれは血小板ですね。出血したときに真っ先に働く大切な要素です。後で、どう働くのかを見てみましょう。あれはカルシウムですね。我々の世界では第4因子とも呼ばれます。色々と便利ですよ。何人かの人はカルシウムを使いますが、その際はこんなアイテムを使います。 ※浮いているのは、血小板、第8因子、第5因子、α2PI、カルシウム コ:キラキラしていて綺麗だね。 あ:これには、Gla残基という名前がついています。一部の凝固因子が生まれるときに体に刻まれます。その時にビタミンKという物質が使用されます。その他、いくつか道具が流れていますが、またあとでゆっくりみていきましょう。 コ:あの壁際にいる人は誰? ジュニー:おっ!お客さんかい?はじめまして。私はジュニー・ハーゲマンという。第12因子とか、ハーゲマン因子とも呼ばれている。 コ:ジュニーさんは何をしているの? ジュニー:血管の様子を見て回っているんだ。 コ:点検屋さんなんだ? ジュニー:まあ、それだけではないけどね。異常があれば、彼らに連絡することもある。 コ:彼ら? イレブン:私たちはPTAイレブンと呼ばれるチームさ。第11因子とも呼ばれる。 コ:PTAって、学校とかの? イレブン:学校とは関係ないよ。難しい名前(Plasma Thromboplastin Antecedent(血漿トロンボプラスチン前駆物質))がついているよ。覚えなくてもいいけど。僕たちが指令を増幅して、クリスマスナインへの伝令役を務めるんだ。 コ:全員、番号は11番なんだね? イレブン:第11因子だからね。番号をそろえているんだ。 ナナ:あれ?シロクマだ?なんでこんなところにシロクマがいるの? コ:はじめまして、コシロです。今日は凝固の見学に来ているんだ。君は? ナナ:私はナナ・プロコンバーチン。私も血管の見回りをしているよ。第7因子とかプロコンバーチンとか言われるかな。 コ:ジュニーさんと同じ感じかな? ナナ:私は血管の修復はしないよ。緊急事態があったら連絡するだけ。主にクロスさんのところに連絡するけど、クリスマスナインのところに連絡することもあるよ。 コ:さっきも出てきたけど、クリスマスナインって? ナナ:あそこにいる連中だよ。 クリスマス:はじめまして。我々はクリスマスナイン。第9因子とも呼ばれる。PTAイレブンから連絡を受けたらこいつを使ってクロスさんに連絡をするんだ。 コ:さっきからふわふわ浮いていた、ハチみたいなボールだね。 クリスマス:こいつは第8因子と呼ばれるボールだ。これを使ってクロスさんへの連絡をする。使い捨てだけどね。 コ:さっきから名前が出ているけど、クロスさんって誰? クロス:私のことです。クロス・スチュアートと申します。第10因子やスチュアート因子とも呼ばれます。私は凝固を動かすための司令官といったところでしょうか。 コ:司令官なんだ? クロス:ポジションとしてはそれに近いのです。ナナさんやクリスマスナインからの連絡を受けて止血の必要性を判断します。状況に応じて、この第5因子を使います。 コ:これもさっきからフワフワ浮いてるよね。 クロス:そして、それを受けて出血を止めにかかるのがプロトロンビンです。 プロトロンビン:それが我々です。プロトロンビン、第2因子とも言われます。 コ:ロボット? プロトロンビン:出血を止めるための装置ですね。我々は命令を受ければトロンビンに変身し、出血を止めにかかります。そのために使うのがこれですね。 コ:これもさっきからフワフワ浮いていたね。 プロトロンビン:そうです。これがフィブリノゲンと呼ばれる糊です。 クロス:正しくは、フィブリノゲンですね。 プロトロンビン:第1因子とも言われますね。血液の中にはこのフィブリノゲンが流れていて、傷口に絡みついたフィブリノゲンをフィブリンに変えて硬くすることで、出血を止めるのです。 コ:なるほど。他に、出血を止める時に、他に関係する人はいるのかな? あ:いえ、主に働くのはこれだけですね。 コ:ということは、ジュニーさん(12)、ナナさん(7)、PTAイレブン(11)、クリスマスナイン(9)、クロスさん(10)、プロトロンビン(2)が働いているわけだね。 あ:そうですね。あとは道具として、第4因子、すなわちカルシウム、第8因子、第5因子、第1因子、すなわちフィブリノゲンが使われています。ほとんどの道具は消耗品です。第8因子と第5因子は、他の特定の凝固因子に直接使われる道具なので、補酵素と言われますね。第4因子、カルシウムは大して消耗はされませんが、血管内から減ってしまうと、血を止めにくくはなりますね。 コ:いろんな人と道具が働いているんだね。あれ?3と6は? あ:第3因子は血管の外を覆っている物質です。今は見えませんが、出血をすれば見えるようになりますね。第6因子は永久欠番ですので存在しません。 コ:なるほど。 あ:皆さんに挨拶は済んだようなので、現場を見てもらいましょう。今回は基本的な現場の見学になります。 コ:実際に止血をする場所を見に行くのかな? あ:そうですね。歩いていたらそのうち現場に出くわすでしょう。 ナナ:あれ、さっきのシロクマだ。お散歩してるの? コ:出血を止めるための現場を見せてもらおうと思ってるんだ。 ナナ:どこで出血するかわからないもんね。 (突然爆発!) コ:どうしたの? ナナ:けがをしたのかな!あれは第3因子!血管の外にあるはずの第3因子が見えるってことは、血管が破れたんだ! コ:第3因子? ナナ:組織因子のことだよ。つまり、出血が始まったってこと! コ:あっ、入り口が狭くなって、血小板が傷口に向かって流れていく! (血小板が張り付いてスクランブルを発信) ナナ:入り口が狭くなって出血を減らしているの。そして、血小板はフォンウィルブランド因子という成分で壁にくっついて、変形するんだよ。それで傷を塞いで一次止血をするんだ。でも、それだけだと脆くて簡単に壊れちゃうから、補強しないと。 コ:本当だ、不安定にグラグラしてる。 ナナ:こうしてはいられないね。合図しないと!Gla残基を使って、第4因子、カルシウムを取り込み!行くよ! (光る演出) ナナ:Gla残基にカルシウムが結合。クリスマスナインとクロスさんへ。 クリスマスナイン1:ナナさんからの合図だ。 クリスマスナイン3:次の指示を待とう。 クロス:あれは、外因系のナナさんからの合図ですね。トロンビンを動かし始めましょう。Gla残基に第4因子、カルシウムを取り込みます。内因系の合図があるまでは、強く動き過ぎないように、まずは少しだけ起動して様子を見ましょう。 (第5因子を使用) プロトロンビン:Gla残基に反応がある。血小板からのスクランブルをキャッチしたようだな。ここが現場か?あれはクロスさんの送ってきた第5因子? (1体のプロトロンビンをトロンビンに。この時、F1+2が遊離するのを忘れないように) プロトロンビン:トロンビンに変身。これで凝固ができるようになったな。 PTAイレブン:あれは、トロンビンじゃないか!どこかで出血しているのか?おい、クリスマスナイン、トロンビンの追加要請をした方がいいんじゃないか? クリスマスナイン1:……ナナさんからの合図もあるし、トロンビンも働いているのか。確かに止血が必要なようだ。トロンビンの追加を要請しよう! クリスマスナイン2:おう!Gla残基を使って、第4因子、カルシウムを取り込み!投げるぞ! (第8因子を投げる) クロス:クリスマスナインからの合図がありましたね。出血は間違いないのでしょう。それでは、本格的に第5因子を使って、プロトロンビンをトロンビンに変えていきます。Gla残基を使って、第4因子、カルシウムを取り込み!では、本格的にプロトロンビンを活性化します! (いくつものプロトロンビンをトロンビンに変える) トロンビン:プロトロンビンからトロンビンへ。凝固を行います PTAイレブン:またトロンビンだ!クリスマスナインに声をかけるぞ。 コ:あれ?またPTAイレブンが働いているんだ? あ:これを繰り返すことでトロンビンがまた増えます。これをトロンビンバーストと言います。 トロンビン:出血が起こっているようだな。そして、良い具合に血小板に糊、フィブリノゲンが絡まっているようだ。よし、フィブリノゲンをフィブリンに変えて、血小板を固めるぞ。 (ビームを出して、血小板を固める。この時可溶性フィブリンが流れ出る演出を忘れないように) トロンビン:よし、いけそうだな。とどめだ!必殺!第13因子、スタビライザー! (ビームが収束して、血餅を固める。できれば架橋している分子構造を記載) (光の演出) コシロ:傷口が固まったし、これで終了かな? 案内人:このように傷口がしっかりと固まるのを二次止血と言いますが、それは終了です。でも、まだ続きがあります。具体的には、過剰に活性化した凝固因子を抑える必要があります。 ナナ:うまくいったみたいだね。 クロス:トロンビンの刺激を受けて、組織因子経路阻害因子(TFPI)が増えてきましたね。 ナナ:TFPIも増えてきたみたいだし、そろそろ活動を止めてもいいのかな。 トロンボモジュリン:トロンビンを感知。 トロンビン:うわぁ!トロンボモジュリンが!(トロンボモジュリンに捕獲され) プロテインS:トロンボモジュリンが反応した。Cよ、こっちだ。 プロテインC:プロテインSよ!!わかった!!いくぞ!!せいやっ!!はあ!! (活性化第5因子と第8因子が爆破される) クリスマスナイン:プロテインSとプロテインCが働きだしたか。 クロス:活性化した第5因子と第8因子が働きにくくなりましたね。 アンチトロンビン:凝固をやめてください!凝固をやめてください! ジュニー:アンチトロンビンが目立つようになったな。 PTA:確かに、そろそろ出血が落ち着いて働き過ぎたのかもしれない。 クリスマス:アンチトロンビンも働いているし、第8因子も壊される。とりあえず、凝固はストップすることにしよう。 トロンビン:トロンボモジュリンにつかまるわ、アンチトロンビンも騒ぎ出すわ。もうやめにします。 クロス:組織因子経路阻害因子もアンチトロンビンも出てきましたね。第5因子も壊されるようです。作戦を終了としましょう。 あ:止血が完了して、凝固因子も落ち着きを取り戻したようですね。 コ:トロンビンによる止血が終了した後も、色々動いたね。 あ:終了した後、活性化した凝固因子を抑えるために、組織因子経路阻害因子、トロンボモジュリンと、それによって活性化されたプロテインSとプロテインC、アンチトロンビンが働いていましたね。これは固まりすぎないように調整してくれるシステムです。常に機能しているのですが、止血が完了したら、特に強く働きます。 コ:とてもうまく連携のできたいい働きだったよ。……って、ジュニーさん、何もしていなかったんじゃない? ジュニー:ああ、バレてしまったか。その通り。普通の出血の時は、別に私の仕事は無いんだ。 コ:働かない人なんだ? ジュニー:私が活躍する場面もあるんだけどね。さっきのはその時ではなかったというだけだよ。おや、あれは? コ:どうしたの? ジュニー:(カリクレインを振って)これは、人工物だ!PTAイレブン、異常ありだ!凝固系を動かしてくれ! PTAイレブン:了解! (だっと解散する) PTAイレブン:クリスマスナイン、異常があった。クロスさんに連絡をするんだ。 クリスマスナイン2:どうする? クリスマスナイン3:ナナさんからの連絡はなさそうだぞ? クリスマスナイン1:ナナさんからの連絡が無くても、PTAイレブンから連絡がある以上は、第8因子を投げた方がいいんじゃないか? (戸惑いつつ少しだけ第8因子を投げる) クロス:これは、クリスマスナインからの合図ですね。ナナさんからの連絡は無いみたいですが、異常があるということなのでしょうか?仕方ありません。少しだけトロンビンを動かしましょう。 トロンビン:プロトロンビンからトロンビンへ。えっと……現場はどこだ?仕方ないからその辺を凝固しておこうか。 コ:なんか、チグハグだね。でも少しずつ血の塊ができているのかな? あ:でもきちんとくっつく所が無いから、簡単に流れていきますね。どこかできちんと溶かされたらいいんですけど、変なところにくっついて育ったら、血栓ができてしまいます。 コ:それはいけないね。ナナさんが細胞の外の組織因子をみつけていたらいいんだけど、そうなっていなかったらいつもよりきちんと働けないし、行動もチグハグになってしまうんだね? ナナ:私は凝固の開始の合図を出すけど、場所を指定する仕事もあるからね。場所がわかっていると、やっぱりみんな働きやすいよね。 コ:そうだね。逆に場所がわからなかったら、みんなうまく働けていなかったね。 あ:現場を見たら、凝固系の流れはなんとなくわかりましたか? コ:まずは、凝固因子として働く人たちがいて、色々な道具を使っているんだね。そして、みんなが連携して止血ができたら、組織因子経路阻害因子、トロンボモジュリンと、それによって誘発されたプロテインSとプロテインC、そしてアンチトロンビンが凝固系を止めるんだね。 あ:そうです。凝固系が過剰に働いたら有害になってしまいますからね。 コ:そして、ナナさんの働きがあると効率よく働けるけど、いないと効率が落ちるしチグハグになって、血栓のリスクが出るんだったね。 あ:大体わかっていただけたようですね。では、休憩したら、皆さんの話を聞きに行きましょうか。 |