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ペ:こんにちは、ペンギン先生です。 コ:コシロです。 ペ:今回は「マイケル・ジャクソン 世界一有名な麻酔事故」について解説していこうと思います。 コ:これは有名な話だよね。 ペ:マイケル・ジャクソンというと、誰もが知っている、アメリカの伝説的なシンガーソングライターだ。「人類史上最も成功したエンターテイナー」としてギネス世界記録に認定されており、「スリラー」は1億枚以上売れたと言われている。 コ:まさに伝説的だね。 ペ:そのマイケル・ジャクソンが亡くなったのは麻酔事故が原因とされている。しかし、意外とこれについて、きちんと医学的に説明しているものが少なかったので、事故に至った背景や、医学的な原理も含めて、詳しく説明していこうと思う。 コ:なるほど。 ペ:なお、その前に注意事項です。今回の件につきまして、裁判などでも真実がわからない内容が多くあります。そのため、細かい内容が事実と異なっている可能性があります。また、当事者であるマイケル・ジャクソン以外の実名は伏せますし、人物画像はあくまでイメージ画像であり、必要以上に似せておりません。予めご了承ください。 コ:気になることがある方は、遠慮なくコメント欄に記載してください。 ぺ:チャンネル登録とグッドボタンもよろしくお願いします。 ペ:さて、マイケル・ジャクソンは強い不眠症を患っていたことでも有名だ。 コ:夜眠れないのはつらいよね。 ペ:そんな時には「規則正しい生活をする」「適度な運動をする」「ハーブティーや暖かい飲み物を飲む」「部屋をきちんと暗くする」「落ち着いた環境を作る」「アロマを使う」「布団やまくらを変える」などの他、有名なところだと「羊を数える」なんて言うのも知られているね。 コ:色々あるね。 ペ:それだけ人類は不眠に悩んできた、ということだろうね。実際、文明が発達する前は昼は明るく、夜が暗いのは当然だったのに、今では夜も明るくて、布団の中でも明るいデバイスを見ることができる時代だ。現代社会は不眠を起こしやすい環境、と言ってもいいだろう。先ほど挙げたような一般的な対処法でもダメな場合、薬物に頼る、ということも選択肢に上がる。例にもれず、マイケル・ジャクソンは30代くらいから不眠症に悩んでいて、薬物も色々と試していたようだ。 コ:それで解決しなかったの? ペ:不眠症に薬物で対応するには、正確な知識と患者の理解が必要だ。不適切な薬を不適切に使うと、逆効果になることがある。 コ:たとえば? ペ:不眠症に対する代表的な薬物の中に、ベンゾジアゼピン系と呼ばれるものがある。有名なもので言うと、以下が挙げられる。また、非ベンゾジアゼピン系と呼ばれるものの中でも、睡眠に関しては同じような作用をするものもある。なので、以下の薬は実質的にベンゾジアゼピン系と同じと考えていいだろう。 ベンゾ:リーゼ(クロチアゼパム)、デパス(エチゾラム)、ワイパックス(ロラゼパム)、ソラナックス(アルプラゾラム)、セルシン(ジアゼパム)、ホリゾン(ジアゼパム)、メイラックス(ロフラゼプ酸エチル)、ドルミカム(ミダゾラム)、ハルシオン(トリアゾラム)、レンドルミン(ブロチゾラム)、リスミー(リルマザホン)、サイレース(フルニトラゼパム)など 非ベンゾ:マイスリー(ゾルピデム)、アモバン(ゾピクロン)、ルネスタ(エスゾピクロン)など コ:すごい種類があるね。そして、聞いたことがある薬も多いね。 ぺ:昔から頻繁に使われている薬も多いね。これらは非常に優秀な眠剤で、適切に使うと不眠に対して非常に強い効果を発揮するようになる。 コ:「適切に使わなかったら」どうなるの? ペ:それを説明する前に、少し原理について説明しよう。ベンゾジアゼピン系の薬剤は、脳のGABA受容体という構造に影響を与える。 コ:そんな名前のチョコレートがあったね。 ペ:そうだね。GABAというのは、正式名称ガンマアミノ酪酸で、神経の働きを抑える神経伝達物質として有名だ。神経と神経はシナプスという構造でつながっていて、ノルアドレナリンやドーパミンなどの神経伝達物質が送られると、次の神経が興奮して、さらに次の神経に情報を伝えようとする性質がある。しかし、前の神経がGABAを送り、それを後の神経のGABA受容体が受け取ることで、逆に後ろの神経の活動が抑えられるんだ。これを抑制性シナプスという。GABAの他にはグリシンが有名だね。 コ:神経の活動を抑えてしまっていいの? ペ:神経にもアクセルとブレーキがあって、GABA受容体はブレーキとして働いている、という感じだね。ある程度ブレーキを踏むことによって、神経が過剰に興奮するのを防ぐんだ。GABAのチョコレートは、このガンマアミノ酪酸を含むことで、神経の過剰な働きを抑えて、ストレスの軽減やリラックス効果などが生じる、という触れ込みだね。 コ:なんかよさそうな感じだね。 ペ:まあ、チョコレートに含まれる分では大したことが無いけれど、GABA受容体が過剰に働くと、ふらついたり、転んだり、頭がぼんやりしたり、などの副作用が出るから、そこは注意が必要だ。話を戻そう。GABA受容体に、ベンゾジアゼピン受容体というものが存在している。ここにベンゾジアゼピン系の薬物が結合することによって、GABA受容体の反応が強くなるんだ。それによって、神経の動きが抑えられて、眠りやすくなる、というわけだね。 コ:なるほど、これの何が問題なの? ペ:たまに使うくらいなら問題ない。しかし、乱用すると、GABA受容体は、GABAが強く効きすぎていると判断する。すると、GABAが効きすぎないように、GABAを送ってくる神経に「GABAを減らすように」と指示を送る。これをフィードバック調整という。また、GABA受容体の数自体が減り、反応も弱まり、GABAが効きにくくなるようにする。これをダウンレギュレーションという。こういった調整によって、GABAが効きにくい状態を作る。 コ:GABA受容体って神経の興奮を抑えるものだよね?これが効きにくくなるっていうことは、不眠症が悪化することになるんじゃないの? ペ:その通りだ。ベンゾジアゼピン系の薬剤を乱用することで、GABAの量が減り、GABA受容体の数が減り、反応も悪くなる。これによって、今度は通常状態でGABA受容体の作用が弱くなってしまう。すると、不眠症が悪化することになるし、ベンゾジアゼピン系の薬物も効きにくくなる。悪化した不眠症に対抗するために、ベンゾジアゼピン系の薬物の量を増やすことになる。そうすると、さらに不眠症が悪化するという負のスパイラルに陥ることになる。これをベンゾジアゼピン系の耐性とか、抵抗性という。 コ:これはかなりキツイね。 ペ:マイケル・ジャクソンは、30代の頃から、不眠症に対して様々な薬を試している(ジフェンヒドラミン(H1ブロッカー)、アルプラゾラム(ベンゾジアゼピン系)、クロナゼパム(ベンゾジアゼピン系)、トラゾドン(抗うつ薬、H1ブロック作用あり))。その中には当然のようにベンゾジアゼピン系の薬が入っていたことが知られている。恐らく、繰り返しこのような薬を使っていただろうし、耐性ができていて、不眠症は悪化していたし、これらの薬も効かない、という状態ができていたと考えられる。 コ:不眠症になって、薬を使って、不眠症が強くなるけど薬が効かなくなって、さらに増やしていく、悪いサイクルに入ったんだね。 ペ:マイケル・ジャクソンの不眠の原因は複数考えられている。マイケル・ジャクソンは1997年から大規模ステージから離れていたが、2009年からThis Is Itという復帰公演を予定していた。そのプレッシャーもあっただろうし、美容に使われていた鎮痛薬のメペリジンの副作用で不眠が悪化した、という説もある。 コ:どれか一つの原因というよりは、組み合わせで強い不眠になったのかな? ペ:いずれにせよ、強い不眠なのに、睡眠薬も効かない状態になっていたマイケル・ジャクソンは過去の経験を思い出すことになる。 コ:過去の経験? ペ:1997年の、HIStory World Tourで、ドイツ公演をしている時に、マイケル・ジャクソンが強い不眠に悩んでいたことがあったらしい。この当時もたびたび睡眠薬は使っていたようで、一般的な睡眠薬は効きにくくなっていたのかもしれない。そこで、主治医に連絡したところ、ドイツの医療チームが招集された。その医療チームによってプロポフォールが使われたようだね。なお、プロポフォールとは点滴から投与されるタイプの、強い麻酔薬だ。その時は、手術室のような監視機器がホテルのスイートルームに持ち込まれた、という証言が出ている。 コ:マイケル・ジャクソンを寝かすために、急造の手術室を作った、というわけだね。そういえばプロポフォールってどういう薬なの? ペ:プロポフォールは、GABA受容体を直接刺激する薬、と思っておくといい。 コ:なるほど、ベンゾジアゼピン系の薬と、同じようなものなんだ? ペ:ベンゾジアゼピン系に比べると効くのが早い代わりに、呼吸が止まりやすく、血圧が落ちやすいという特徴はあるけどね。この時は記録に残っている限り2回使用されたようだね。それによって、マイケル・ジャクソンは「プロポフォールによって非常によく眠れた」という成功体験を持つことになる。 コ:不眠に悩んでいて、よく眠れたっていうのは、それは嬉しいよね。 ペ:そして、その成功体験のため、マイケル・ジャクソンは、複数の医師に、たびたび、睡眠のためにプロポフォールを使ってほしいと相談することになる。 コ:そんなに気軽に使える薬なの? ペ:プロポフォールは、効果が強力だし、効果が切れるのも非常に速い薬だ。なので、やろうと思えば、過去の動画で紹介したように、ゆっくり七つを数える間に寝かせられるし、起こそうと思えば、10分程度で起こすことができる。ただ、効き方に個人差がかなり大きく、効きが浅いと全然眠れないし、効きが強いと、先ほど言ったような、血圧が落ちるリスクや、呼吸が止まるリスクがある。きちんとした麻酔科医が適切に使う分には問題ないが、誰でも気軽に使える薬ではないね。 コ:使う人によってそんなに変わるの? ペ:麻酔科医はどの程度の状態の人にどの程度の量の薬を使ったら眠るかの予測が得意だし、予測が外れた時の薬剤調整や対応も得意だ。そして、最も重要なのが、もし血圧が落ちたり呼吸が止まった時の対応力が非常に高い。ただ、それでもきちんと血圧や心拍数、血液の酸素飽和度などをモニターするのが前提だね。 コ:ドイツの医療チームがやっていたような感じだね。それを頼まれても、普通は断るよね。 ペ:そこで、マイケル・ジャクソンは、ある人物と出会うことになる。 ぺ:それでは今回の講義はここで一旦終了とします。 コ:気になる所で切るね。 ぺ:一本の動画にしようと思っていたんだけれど、思ったより長くなってしまったので、ここで切ることにしました。他意はありません。 コ:今回の講義の内容は、医学的な原理を除くと、マイケル・ジャクソンが不眠症に対してベンゾジアゼピン系の薬物を乱用するなどの理由で、不眠症が悪化してしまった。そして、不眠症で悩んでいる時に、ドイツでプロポフォールを使って、よく眠れた成功体験があった。そこから、アメリカでも、プロポフォールを使ってくれる医師を探し求めるようになった、といったところかな。 ぺ:次回は、いよいよ事件の核心に迫っていきます。プロポフォールが不適切に使用された背景や、それが麻酔事故にまでつながってしまった、医学的背景などについて説明していきます。 コ:また次回の動画もよろしくね。 |